最高裁判所第一小法廷 昭和40年(オ)969号 判決 1966年12月22日
上告人
山田ヤスエこと
原田やすゑ
右訴訟代理人
斎藤学二
被上告人
東光商事株式会社
右代表者
片岡千代壱
右訴訟代理人
滝沢寿一
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人斎藤学二の上告理由について。
原審の確定するところによれば、訴外千葉寅男と大場貞子間の本件不動産売買契約が虚偽の意思表示に基づくものであることについて、上告人が善意であつたと認めるに足る証拠は存しないというのであり、原審の右認定は、挙示の証拠により、これを是認することができる。そして、第三者が民法第九四条第二項の保護をうけるためには、自己が善意であつたことを立証しなければならないものと解するのが相当であるから(当裁判所昭和三二年(オ)三三五号、同三五年二月二日第三小法廷判決、民集一四巻三六頁参照)、原審が、前記認定に基づき、被上告人は訴外千葉と大場間の前記売買契約が無効であることをもつて上告人に対抗しうる旨判断したのは正当であり、原判決に所論の違法は存しない。所論は、ひつきよう、原審の前記認定および判断を非難するものであつて、採用することができない。なお、記録によれば、上告人が前記の点につき善意である旨主張していることは所論のとおりであるけれども、右善意の点につき立証のない本件においては、右の所論は原判決の結論に影響を及ぼすものではないから,この点に関する所論も採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(岩田誠 入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 大隅健一郎)